2013年4月11日木曜日

ここに存在するために


2013年4月1日付け沖縄タイムス「唐獅子」に掲載されました。

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朝起きて、窓を開けてふわ〜っと気持ちのよい風が入り込んでくる。
窓の向こうに広がる景色は鮮やかな空色で気持ちがいい。
今日は洗濯日和だ。
靴下、下着、ズボン、上着、タオルにシーツ。
じゃぶじゃぶ洗い、ピンク色の干し紐に洗濯物をかける。
パンパンとお布団をたたいてぽかぽかの陽の光にあてる。
干し終わって、風にそよそよ揺れる洗濯物を眺めながら、のんびりする。

朝起きて、窓を開けてふわ〜っと風が入り込んでくる。
窓の向こうに広がる景色は
薄い膜がかかったようで水平線がはっきりしない。
今日はお布団を干すのはやめておこう。
開けた窓を閉める。
靴下、下着、ズボン、上着、タオルにシーツ。
洗ったものを室内に干す。
もう一度窓の外を見る。
太陽は出ているのに、遠くの景色が見えないほどもやっとしている。
室内で干された洗濯物は風でそよそよ揺れることはない。

思いっきり青空の下、洗濯物を干したい。
お布団をぽかぽかの陽に当てたい。
でも、そんな気持ちと同時に、
もしもこのモヤが晴れたとしても、変わらず道路と建物はあるし、
放っておけば増え続けるのだろうと思った。

そんな景色を眺めていると、
私たちが土地にすむことってどういうことだろうと考えさせられる。

こんなに小さな島に小都市をいくつもつくり、
山も海もけずり、棲む場所をなくした生き物たちが
灰色のコンクリート道路に飛び出してしまったり、
建物から発せられる蛍光灯の光が月の明るさよりも増してしまい、
生き物たちは本来向かう方向を見失う。

ここに存在して生きていく一員として、
人間だけが我が物顔でやりたい放題していいはずがない。

もう道路はいらない、新しい建物もいらない。
ほしいのは、豊かな自然と生き物たちと一緒に棲める環境だと心から思う。

建てる、造るのノウハウを「守る」方向へと転換できるはず。
自然界に入り込むことではなく、
今ある土地の中で循環させていく知恵を身につけてくことがきっとできる。

風も空気も海も川も山も土もみんなひとつ。
地球規模の崩壊には、私たち人間は太刀打ちできない。

私たちがここ存在していくために
すまわせてもらっていることへの感謝の気持ちをもって
行動する時期にきているのではないだろうか。


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